VOL.1_佐々木家具造形研究所 | 佐々木 啓輔
「CRAFT journal」では、私たちと志を同じくし、生活を豊かにするための「一部」あるいは「背景」を生み出すクリエイターの方々を訪ねます。
Vol.1 は、家具職人・佐々木啓介さんの工房を訪れ、素材と向き合う姿勢や、手仕事から生まれる美しさ、0 STOCK TOKYOの洋服への想いについてお話を伺いました。
瑞々しい新緑の風がそよぐ中、横浜市青葉区にある一室のドアを開けた。
椅子にかけられた0 STOCK TOKYOのシャツが、過去でも未来でも凛とした存在感を失わない家具たちとともに、カーテン越しの優しい日差しを浴びていた。アーティストと衣服との接点を探る『CRAFT journal』。
第一回は佐々木家具造形研究所として家具を制作する、佐々木啓輔さんのアトリエを訪ねます。
_数世紀前と現代のデザインが調和する“家具の実験室”
まず目に飛び込んだのは、とてもシンプルなデザインの楢(ナラ)のワードローブ。部屋には音楽も流れておらず、鳥のさえずりが窓の外から聞こえてくる。
「このワードローブは、私がまだ師匠の元で修行していた15年前にデザインしました。宮大工の木組みの工法で、日本伝統の”かんな”で表面を研ぎ、伊勢神宮などと同じく柾目に色を乗せない素地のままで仕上げています。内部の背板に張ってあるのは、テキスタイルデザイナー ウィリアム・モリスの廃盤生地です」
手触りはさらさらでしなやか。15年経過したとは思えない、木がまだ生きているかのような鮮度とぬくもりを感じる。
佐々木さんは岩手県の森と海で遊びながら育ち、建築の学びを経て、岐阜の家具職人の元で8年間修行。
独立前には、ヨーロッパ12カ国、北アフリカ2カ国、トルコ、イスラエル、インド、メキシコなど、計26カ国を2ヶ月かけて回った。
そんな佐々木さんが“家具の実験室”だというアトリエには、自身が手がけた写真の額や椅子、テーブルの他に、1945年にフランスのルネ・ガブリエルがデザインしたキャビネットや、スウェーデンのアクセル・アイナル・ヨルトの椅子、同じくスウェーデンのエリック・ホグランの燭台、推定1700年代に制作されたゴシックパネルの彫り物などが並ぶ。
ワードローブも含めた全ての調度品は、確固たる存在感を放ちながらもそれぞれの個性を補い、一つの空間として表れていた。
「家具をデザインする際に大切にしていることは、調和です。絵や写真、他のお気に入りの家具など、人には大好きな美しいものがあります。その暮らしに家具も溶け込み、補えるよう、意匠の引き算を心がけています。私は衣服の専門家ではありませんが、流行にも左右されないデザイン性が、シャツやパンツに施されたディティールから伝わってきます。だから、何世代も昔のヴィンテージや多国籍/他年代の家具とともに、この空間に自然に在るのだと思います」
そう話す佐々木さんの瞳の奥には、世界各地の文化の美しさをフラットに愛でる柔軟な感性と、100年以上の単位で物事をとらえるスケールが広がっていた。
_遠慮なく共に暮らせるものづくり
アトリエから車で10分。手を広げて深呼吸したくなる澄んだ空気の森の中に、佐々木さんの工房はあった。
2020年緊急事態宣言の時期に自らの手で改修したという吹き抜けの工場跡には、ミラノサローネに出展される受注家具のパーツや、今月の展示会に向けて最終仕上げ段階の家具が並んでいた。
もう廃業してしまったという日本製の大型工機の唸り声と、チーク材の木屑のミストの中、佐々木さんは木を削る。
「これまでは汚れてもいい服をワンシーズンで買い換えながら作業していましたが、タフな素材で、現場で何年も着られる服を探していました。この0 STOCK TOKYOの服はまず汚れにくいし、木屑も払えば落ちる。シワにもなりません。作業場からレストランまで綺麗な佇まいのまま、気を使わずに同じ服で過ごせます。家具も納品時ではなくて、ガシガシ使ってその人の暮らしに馴染んだ時に、初めて完成するものだと私は思います」
美しい木目のチーク材やローズウッドなど、佐々木さんがこれから手を施す高級な木材が壁に並んでいる。
江戸時代から続く仕入れ屋さんと長年に良い関係性を築くことで、確保が難しくなっている良質な木材を安定して入手しているそう。
「どんなものづくりでも同じだと思いますが、素材は重要です。重厚感。手触り。そして耐久性。アトリエのヴィンテージのように、木工家具は世代を越えて使い続けることができます。私が手がけた家具も経年変化を楽しみながら、それぞれの暮らしの中で、長く一緒に過ごしていただけたら嬉しいです。服においても、何度洗濯しても大丈夫という安心感を、いつしか求めていたような気がします。この服はどんなにハードに着ても、伸びたり縮んだりの心配が全くありません。やっと出会えた。0 STOCK TOKYOの服を着て日常を過ごす中で、そう感じることができました」
これからの具体的な展望は決めずに、ひとつひとつの家具造りに欲なく向き合っていきたいと語る佐々木さん。会話のペースに含まれる優しい“間”と、純粋な笑顔から何度も湧き出る「嬉しい」という言葉が印象に残る。
このような方が手でつくった家具には、穏やかで豊かな空気感がきっと宿るはず。
木と対話する大きな背中を見ながらそんなことを考えていたら、工房に猫が遊びにやってきた。佐々木さんは笑顔で出迎えたあと、また工具を手に取り木を削った。
五感を使って空間ごと家具を感じることで、佐々木さんの根底にあるクラフトマンシップに深く触れることができました。ご多忙の中お時間をいただき、本当にありがとうございました。
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佐々木家具造形研究所
佐々木啓輔/ささきけいすけ
1988年岩手県生まれ。
宇都宮大学にて建築学を学んだ後、岐阜県の家具製作会社で木工技術を学ぶ。2020年4月佐々木家具造形研究所を横浜市青葉区にて開業。楢材やチーク材の無垢材を主に使用した家具や彫刻を制作している。
https://www.instagram.com/research_institute_sasaki/